EL34 超三結シングルアンプ

提供: ZOIDS WiKi
移動先: 案内検索
EL34超三結

GT管で超三結作ってみたい。という目的で制作しました。

回路形式
超三極管結合V1 シングルA級ステレオアンプ

初段 東芝 NPNトランジスタ 2SC2240(BL)
電圧帰還管 双三極管 JJ 12AX7
出力管 五極管 JJ EL34(6L6族 6L6GC KT88交換可能)

最大出力 4W+4W


回路図

6l6stc.png

回路構成

電源トランス

元々は適当な「電源トランスがあったから」、作ってみようという発想でしたが、10年以上前の古いものだったからか、実際に負荷をかけると220Vの端子から200Vしか出力されず、トランスは買いなおしました。240V端子まであるのでB電圧300Vぐらいまでは作れるはず。

ヒーター用のトランスは30VAです。EL34は1.5A(3A)、KT88で1.6A(3.2A)、12AX7が0.3A(0.6A)流れますので大きめの容量が必要です。

どちらもデジットで普通に売られている大阪高波の汎用電源トランスです。真空管用ではありません。

整流部

普通にダイオードブリッジで全波整流してコンデンサーインプット。超三結は出力管の内部抵抗が等価的に低くなるため、簡単にハムが出ます。経験上400uF以上はコンデンサを入れないと駄目です。チョークなんてもっての他(デジットでも売ってますが)なのでFETによるリップルフィルタを入れます。

2SK2698FはVDSS=500V ID=15A PD=150WのパワーMOSFETです。マルツで売っています。表面はモールドですが、背面は金属むき出しなので絶縁シートも必要です。かなり発熱しますので、ケースの外に出して十分な放熱板を与えてください。

ZDで出力電圧を決めてますが、トランスの能力や負荷で整流後のDC電圧の予測が困難なので、適宜調節して下さい。FETでのドロップ電圧が大きくなると放熱が大変です。

ヒューズはおまけです。1度ショートさせてしまいましたが、1次側のヒューズが先に飛びました。

出力側の47uFの電解は必須です。無くすと音が出ません。また大きすぎるとFETが壊れます。そんなに大きくなくてもハムはまったく出ません。左右別に計100uFとなっています。

SG(スクリーングリッド)に加える電圧を作っている抵抗分圧はもう少し考えた方がいいみたいです。かなり熱を持ちます。実測値で230Vぐらいです。

初段

初段はバイポーラトランジスタの2SC2240を採用しました。東芝製で低周波低雑音、低信号源インピーダンスでの雑音指数を小さく設計されています。VCEの耐圧も120Vあり、真空管アンプにも合います。入手製は少し悪くて新しく開店した千石電商で入手しました。FETの2SK30Aを使用する回路がスタンダードですが、こちらの方が低歪です。

カップリングコンデンサはニッセイ電機の音響用、積層型メタライズドポリエステルを使用しました。

バイアス調整用半固定抵抗は多回転タイプのものを使用して下さい。調整が大変シビアなのと、信頼性を確保するためです。また取り付ける時に最大値(2kohm)にセットしておいて下さい。間違えると一発で出力管が暴走します。

定電流ダイオードは1mAタイプです。価格は少し高くて105円します。

電圧帰還部

電圧帰還管にはポピュラーなJJの12AX7を採用しました(1300円くらい)。双三極管なので左右で共有して一本で済ませる事も出来ますが、私は左右で一本ずつ使いました。余った片側を使ってP-K帰還を加えることも出来ます。

カソード抵抗は一般的な1/4Wの抵抗でOKです。

出力管のG1との間に入っている300ohmは発振防止用です。無くても発振はしてないようでしたが念のために入れておきます。

出力部

出力管は最初は手持ちの6L6GCでしたが、最終的にJJのEL34になりました。ペアで4000円しません。

ソケットの接続はEL34(五極管)でも6L6GC(ビーム管)でもどちらでも使えます。Gm(相互コンダクタンス)が大きくて、元々内部抵抗の低い管を選ぶのがコツだそうです。KT88でもちゃんと動きました。

カソード抵抗はかなり発熱します。最低10W以上のものを使ってください。出来ればケースの外に出すことも考えてください。パスコンの電解コンデンサは念のため耐圧は100Vのものを使ってください。

出力トランス

一番コストが高い出力トランスですが、安いものです。拘るとすぐに一万円に迫ってしまいますてので。デジットで2250円で売られている6W用のものです。流せるDCが50mAなので回路設計もそれに制約を受けています。トランスに一万円掛けられるなら、100mA流せるものがありますので、カソード抵抗を下げて、電流を流せばもっと出力が取り出せると思います。

ケース加工

ケースはタカチのYMシリーズで、ちょうどA5版の大きさのものです。多分、メーカさんが考えていたのとは上下逆に使ってますが、結構いけてます。大きい出力トランスを使うならA4サイズは必要です。

電源トランスを汎用のものにしたので、コイルの巻き方が出力トランスと平行になってしまいます。ケース加工するまえに電源トランスに100Vだけ入れてみて(二次側の感電に注意)、出力トランスにテスタを繋いで誘起される電圧を見て配置を考えましたが、A5版の大きさではどうやってもハムが入ります。電源の方を90度捻るのが普通なんでしょうけど、今回は出力トランスの方を90度捻ってハムは回避しました。

後の祭りですが、思った以上にトランスやらカソード抵抗やらが発熱して熱くなります。通気口を開けたり廃熱には十分考慮して配置設計して下さい。

配線

電源部と初段周りは汎用プリント基板に組みました。それ以外はラグ板を使って適当に配置。

電線も普通の耐熱電線を電流の大きさで太さを変えて二種類。余りモノを多用したので色は目茶目茶です。

調整

実際にトランスから出てくる電圧と、ツェナーで決めた定電圧値を比べて、余りに差が大きい場合はツェナーの値を調整します。B電圧そのものはぴったり300Vとかする必要はないです。

スピーカー端子には何か負荷(壊れてもいいスピーカーか擬似抵抗)を繋いで下さい。出来が悪いと発振します。 片chだけに管を挿入して、出力管のカソード抵抗の両端の電圧を測定します。1kohmなので直読で電圧=mAです。最初は30Vちょっと程度だと思います。40Vに迫ったら抵抗値の初期設定を間違えています。直ちに電源を切って確認して下さい。

30Vぐらいで安定したら半固定抵抗を少しずつ回して、抵抗値を減じていきます。なかなか反応しないと思いますが、一回転回したら様子見て、を繰り返してください。ある時点で急に電圧計が反応する点があります。そこからは慎重に回してください。大体45VぐらいになったらOKです。

残ったchにも管を挿入して同様に調整して下さい。

負荷の関係で先ほど実施したchも調整点がずれていると思います。再度確認して下さい。

しばらく放置して温度が上がるまで待ちます。再度確認して下さい。温度が上がると増加気味になってると思いますが、通常数mAの範囲です。

スピーカーを本番に交換し、音源を繋いで下さい。

シングルらしからぬ低音と共に音が聞こえてくるはずです。

評価

日本橋だけで購入した部品で真空管アンプを作る。というポリシーで進めましたが、なんとか達成出来ました。ネットに真空管アンプの製作記事は溢れてますが、いざ作ってみようとすると、真空管がレアだったり、日本橋では手に入らなかったりで再現性が高い制作例というものはなかなかありません。ここで紹介した回路構成は2008年5月の時点で、他の方も作成できると思います。真空管類はテクニカルサンヨーで入手出来ます。東京真空管は例によって役に立ちません。現行管があまりにしょぼいです。デジットにも置いてますがボリ杉なので避けました。トランジスタだけ千石、MOSFETはマルツ、他はデジットか共立で揃います。

GT管で超三結を作ってみたい→ちょっとは出力が出るでは。という期待はあまり満たされませんでした。多分4~5Wは出てますが、人間の耳では差が解りません。低音もシングルのちゃちなトランス仕様の割りには出ています。超三の音です。しかし、6BM8で羊かんみたいなトランスから出てきた低音、というインパクトはありません。もうすこしトランスにお金を掛けてもよかったかな。

超三結やシングルアンプで気になるハム音はFETリップルフィルタのおかげで深夜にSPに耳を近づけても判りません。残留ノイズも同様で、ボリューム最大、入力開放にしても何も聞こえません。危惧される発振も無いと思われます。アースは電流の流れるグループ単位でラグ板などにまとめるだけです。特に母線式にはしてません。交流の流れるところは出来るだけより線に。

綺麗な高音、ピアノの鍵盤の音、人の声の息づかいもくっきりと解る解像感は6BM8より上です。低音も見かけの真空管の大きさの割には、という意味であり、しっかりと底支えしてくれています。

発熱が大きいのが欠点ですが、我が家のメインアンプとして実用に耐えるものに仕上がりました。

最後にお約束ですが、超三結V1回路はシンプルですが、あまり安全性の高い回路ではありません。定期的にカソード電流を測定して、出力管の暴走に注意して運用して下さい。また、一般に真空管回路は高電圧を扱い、ヒーターを持つ構造上、高温になります。トランス類、抵抗もかなり熱を持ちます。

再現にトライする方は自己責任でお願いします。